<有機宇宙地球化学研究室の紹介>   戻る

ビッグバンによる宇宙開闢から137億年、また太陽系誕生から46億年を経て、我々がこの地球上に存在しています。宇宙において最も存在度の高い元素である水素、酸素、炭素、窒素(不活性なヘリウムを除く)は我々生命の基本骨格をなす有機化合物を構成する元素でもあります。星間空間から隕石・宇宙塵のような地球外物質中の有機物、あるいは原始地球上で生成した有機物からどのように原始生命が誕生したかは科学の最大の謎です。

 また、地球上に誕生した生命は地球表層環境を大きく変えてきました。逆に環境の激変時には生命は大きな打撃も受けてきました。まさに生命と地球環境は共に進化してきたわけです。最近は人間活動による地球環境への影響がとりざたされており、問題の解決のためには地球環境変動と生命活動の関連メカニズムを明らかにする必要があります。海洋堆積物や様々な年代の堆積岩中には過去から現在までの地球環境と生命活動の記録が刻まれており、生物が作り出したバイオマーカーと呼ばれる有機分子化石が当時の生命・地球相互作用の謎解きをさせてくれます。

 私たちの研究が目指すものは宇宙地球史における有機化合物の化学進化、地球上での生命の起源、さらに様々な進化した生命活動は長い地球史(〜数十億年)のなかで地球表層環境をどのように変えてきたのか、そしてその環境変動と生物の多様性(進化)とはどのように結びついているか、など有機化合物を通して地球の過去・現在・未来における生命の姿を追求していくことにあります。

・近年の具体的研究活動

1) 地球外物質(隕石など)中に含まれる有機物の化学構造および同位体組成を明らかにし、宇宙・太陽系における化学進化と生命の起源を考察します。

2) 先カンブリア代(約5億4千万年以前)の堆積岩(オーストラリア、南アフリカなど)中に含まれる有機物の化学的および同位体的特徴を明らかにし、生物進化とそれらの生命活動と地球表層環境の進化がどのように結びついているか考察します。

3) 生命環境圏の広がりを明らかにするために、熱水・高度塩環境などにあるバクテリアなどの活動・生態系についてバイオマーカーを使って研究します。

4) 海洋や湖堆積物試料中の炭化水素・アルコール・脂肪酸などの生物に特有な "バイオマーカー" から過去約 30 万年間の地球環境変動を解明したり、数千から数百万年前の堆積岩中の有機物を取り出し、地球表層環境の大事変や環境復元のメカニズムを探ります。

 特に様々な宇宙・地球環境試料中の微量有機化合物をクロマトグラフや質量分析計などを用いて、測定手法を開発しながら、有機分子レベル・同位体組成レベルで解析することによって、研究を進めています。

(左から)1)オーストラリア・ハマースレイ地域の約27億年前の有機物を豊富に含む地層。当時の生命活動と地球環境の関係について教えてくれる。2)軽元素の安定同位体比質量分析計。ナノモルレベルで炭素(13C/12C)、水素(D/H)、窒素(15N/14N)の安定同位体比を精密に測定し、生物活動と環境についての情報を得ることができる。3)海底の熱水噴出孔におけるCHNSからなるいろいろな化学種とそれらの考えられる同位体比。海底の熱水噴出孔には光に依らない豊富な生物群が存在し、地球最古の生命はこのような高温環境で発生したと考える人が増えてきた。

 

・学生のみなさんへのコメント

「我々はどこから来たのか、我々とは何か、我々はどこに行くのか」(ゴーギャン,1897)。自然科学の探求(研究)は我々がなぜ今ここに存在し、これから何をすべきかということを考えさせてくれます。研究室ではみなさんが熱心に学び研究する設備、アドバイザー(教員)を提供しています。