の3点を主眼に研究を行ってます。
1の河川河口域環境研究は主に4年生で卒業する学生に与えているテーマです。これは科学技術関係の職種で就職が難しい4年生で卒業する学生は、逆に早く世に出てなにかを伝えてくれるものと思い、環境問題に触れてほしいという思いからです。あまり大学院進学希望者がこない(過去には大学院進学希望者をもらえなかった)という事情もあります。財団による研究援助(H13昭和シェル、H14河川環境財団、H15クリタ水環境財団、H17 ソルトサイエンス財団)もいただいています。
2の古細菌代謝の研究は化学、生物、地球科学に広く興味のある学生との実験とDiscussionの必要があり、大学院志望の学生との共同研究が原則です。共同研究者として2年は研究に関わってくれる修士がひとりいれば論文1報は出せるかなと思います。4年生のみで卒業していく人には少し難しいかなと思いますので、部分的に関与してもらうしかないです。
3の研究は、実際の有機分子が生命のない(生命以前の)状況でどのように生じたか、現在はアミノ酸の鏡像体過剰(生物のアミノ酸はすべてL-体)がキラルでない環境からどのように生じたのか、もっとも簡単なグリシンと二価イオンの金属錯体+少量のキラル源で,反応がおこる間でなにかおこるのではと考え実験を行っています。(現在休業中)。
地球科学には関係ないようなところもありますが、地球科学でも化学(あるときは分析化学、あるときは生物有機化学)でも”そこそこ”のレベルで討論できるようなものをめざしています(どっちつかずか?)。
Noriaki YamauchiThe Pathway of Leucine to Mevalonate in Halophilic Archaea: Efficient Incorporation of Leucine into Isoprenoidal Lipid with the Involvement of Isovaleryl-CoA Dehydrogenase in Halobacterium salinarum. Biosci. Biotec. Biochem., 74, in press (2010).
好塩性古細菌においてイソプレノイド膜脂質は,近年粘性細菌やトリパノゾーマ原虫で発見された,ロイシンから短絡的経路でメバロン酸が生合成され,そこから通常のメバロン酸経路にて生合成されることを示した。この間で関与する酵素反応でロイシン末端ジアステレオトピックメチル基の認識に関する立体化学を決定した。
Noriaki Yamauchi 好塩性アーキアに特有なC25-C20ジエーテルのESI-MSとGC−MSによる分析:高塩分環境指標としての検討 Res. Org. Geochem., 28, 23/24 123-130 (2008).
好塩性アーキアに特有なC25-C20ジエーテルを好塩性アーキアについてのバイオマーカー,塩性環境への環境指標分子として利用する第一段階として,この化合物の分析方法を示し,これまで知られていたTMS化体のGC-MS分析では,フラグメンテーションの検出と解釈に誤りがあることを指摘した。
山内 敬明 古細菌の特異な膜脂質の生合成ー極限環境への適応への理解と新たな膜分子設計への情報提供に向けて
有機合成化学協会誌 65, 575~584 (2007)
古細菌の特異な膜脂質の特徴を述べ、さらに本化合物の生合成に関しここ7〜8年で私の行ってきた研究とその他グループの研究のトピックスを示し、さらに最新の結果や今後の展望を述べた。
Noriaki Yamauchi, Norisuke Kamada and Hideyoshi Ueoka The Possibility of Involvement of メCyclaseモ Enzyme of the Calditol Carbocycle with Broad Substrate Specificity in Sulfolobus acidcaldarius, a Typical Thermophilic Archaea. Chemistry Letters, 35, 1230-1231 (2006)
好熱好酸性古細菌の主要な一群であるSulfolobusに特徴的な五員環化合物カルジトールはグルコースから直接生合成されることが示され、またガラクトースもほぼ同等にカルジトールに変換されることを発見した。これはC-4位立体化学の認識の緩いカルジトール五員環環化酵素が存在することを強く示唆する。
Noriaki Yamauchi and Satoshi Endoh Improved Isotopic Deuterium Labeling at the Diastereotopic Methyl Group of Leucine: a Synthetic Route to (4S) and (4R)-[5-2H1]Leucine. Biosci. Biotrc. Biochem., 70, 276 ~ 278 (2006).
生物化学への応用や多次元NMRへの利用をより容易にするため、ロイシンのジアステレオトピックメチル基を、立体特異的に一つの重水素を標識した化合物の両異性体を合成する簡便かつ安価な方法を開発した。本方法はHillらの方法の延長線上にあるが、さらに短段階化で改善をはかるとともに、最も問題であった脱炭酸反応に等量の高価かつ処理の困難なロジウム錯体を用いる代わりに、ラジカル性の脱炭酸/よう素化反応を用いた。本反応の鍵反応生成物の立体化学を、文献既知の化合物に導き確認した。本方法は、該当するトリチウム標識化合物の調製にも有効であると思われる。
Noriaki Yamauchi, Wakana Toyodome, Kiyomi Umeda, Noriyoshi Nishida, and Tatsushi Murae. Structural Features of Humic Acid of the Coastal Sediment in Ariake Sea Tidelands: Use of Humic Acid as an Environmental Indicator of the River Basin and the Coastal Region. Anal Sci., 20, 1453 ~1457 (2004).
干潟や河口域の環境評価に表層土の腐植物質が利用できないかということを主眼に、有明海沿岸の河口(早津江川河口)で採取した試料より抽出したフミン酸成分の構造上の特徴を示し、現地の微生物活動の経過が保存されていることを示唆するデータを得た。